京都生活 ー雨音に惚れてー

東京から京都に越して来て築90年?の家に住んでいます。見に来ていたときに降り出した突然の雨がトタンの部分に当たる音に惚れて決断した家です。おもしろいこと、すてきな場所、京都について感じたことについて綴ります。

流響院見学

今日は、市民新聞だったかの記事を見て申し込んでおいた岡崎の流響院見学の日でした。

流響院は、現在は宗教法人・真如苑が所有・管理していますが、春と秋に一般公開を事前申し込み制で行なっているようです。

 

明治末に実業家塚本与三次が建てた邸宅で、その後、龍村美術の龍村氏の所有になり、真如苑が龍村氏から譲り受けたとのことです。

米軍に接収された時に、母屋の鴨居、欄間、襖は取り払われ、畳もフローリングに変えられて、ダンス会場になり、母屋のお茶室はシャワー室にされて、米国軍人が住んでいたそうです。

それを文書、図面、写真を参考に復元、庭も埋められていた流れを掘り出したりして復元して、今の姿になりました。(京都では、土を掘って何か古いものが出てくると、発掘調査をすることになり、調査は学者がするけれど、費用は施主持ちだそうで、古都で工事は大変です。市役所や府庁舎の改修工事でも「発掘調査中」の幕が張ってありました)

 

有名な小川治平と長男安太郎による庭は、母屋から正面に見える東山の峰々からずっと続いているかのように木が植えられ、池と滝とせせらぎが配置されているのですが、散策する人は自然の中にいるような気分になるのに、実はすべてが計算され尽くされているのです。

 

東山は昔は松の木が植えられていたそうで、その延長に見えるように松の木が植えられ、遠近感を出すために近くに太い松、遠景に細めの松が植えられているそうです。

藤は棚を作ると人工的になってしまうので、松の木に寄りかかるようにしてありますが、植木屋さんは、女藤が男松を絞め殺す、というのだそうで、直接からまないようにロープなど使ってあります。(植木屋さんの職人の世界もおもしろそう)

 

琵琶湖疏水から引かれた水が、曲水とせせらぎと二段の滝となって池に注いでいますが、場所によって滝の音が聞こえたりせせらぎの音が聞こえたり、曲水の流れも深さに差をつけることで水の流れに変化をつけてあるなど、驚嘆するばかりです。

説明していただきながら、庭園を一周して、どうして「流響院」の名前をつけられたのか、納得できました。

 

その二段になっている滝も、二段に見えるのは、庭の一箇所からだけで、少しずれた場所からは、段になっているように見えないように松の太い枝が段を隠しています。

 

雁行型の母屋の東山に向かって一番突出したお部屋で、観月の宴が催されるそうですが、大きな庇のために月は直接見えず、中秋の名月は池に美しく映ったものを鑑賞するとのこと。

もう感心してしまうことばかりです。

 

さらに、それまで日本庭園に使われなかった芝生を取り入れたり、私など今まで見たこともなかったような外国産の木を茶室の前に植えたりと、斬新でもありました。

 

永観堂も近く、観光客で混雑するバス通りが外を走っているとは思えない静かなお庭で、日光に透ける紅葉、木々や青空を映す池、澄んだ水の音を堪能させていただきました。

余計なものに煩わされずに歩を進めるにつれて変化していく微妙なもの、草木や花、音を十分に感じ取れるように、撮影禁止なのだな、と思いました。

 

というわけで写真がありませんし、メモも取らず記憶が頼りなので、勘違い、記憶違いがあったらごめんなさい。

自分の忘備録かねて書きました。

 

今の季節、早朝には東山に靄がかかり、池から水蒸気が立ち昇るそうです。どんなにかすてきでしょうね。それを見たいと望むのは高望みすぎるとしても、桜の季節に再びこの庭園を見たいものです。