京都生活 ー雨音に惚れてー

東京から京都に越して来て築90年?の家に住んでいます。見に来ていたときに降り出した突然の雨がトタンの部分に当たる音に惚れて決断した家です。おもしろいこと、すてきな場所、京都について感じたことについて綴ります。

アスタルテ書房

アスタルテ書房のことを知ったのは、もう20年ほど前のことです。

当時私は横浜に住んでいて、東京にアルバイトに通っていました。

(主婦だったけどパートというよりアルバイトというほうがしっくり来る

仕事でした。定義があるのかどうか知りませんが…)

 

そのアルバイト先で雑談していて、京都にマンションの一室で営業している、

生田耕作コーナーなんかがあるおもしろい書店があるそうだ、と

聞いたのでした。

 

おもしろそうと思いながら、なかなか機会がなく年月が流れ、

2011年に京都に移住してから、インターネットで検索して、

アスタルテ書房という名前だということと、場所を知りました。

 

さっそく行ってみましたが、たしか外に看板が出ていて、

2階に階段をあがっていくとドアが開けてあったので、

思ったよりわかりにくくなかったです。

 

その後京都に観光に来た友人と訪ねました。

塚本邦夫の歌集を買いました。

普通の本の紙よりこころもち厚手の紙にエッチングのような活字で

印刷してあります。

こういう本の醍醐味は電子書籍ではありえません。

 

去年でしたか、数回、前を通っても看板が出てなくて、

新刊の書店でありながらユニークな寺町の三月書房さんのブログで、

店主が難病で入退院を繰り返していると知りました。

退院のニュースもありましたが、私が通る時は看板が出ていませんでした。

 

そしてついに、悲しいことに3月書房さんのブログに訃報が…

 

ご子息が跡を継ぐ意志がないので半額セールをするということでしたので、

思い出に何か買いたいと思って出かけました。

 

入り口で靴を脱いで入るのは以前と同じです。

 

 ほの暗いようでいて、文字が読めないほど暗くないのは、

複数の雰囲気のある照明が絶妙なのでしょうか。

ファンらしき人たちが数人熱心に本を見ています。

 

 金子國義のアリスシリーズの画集や、展覧会のカタログ、生田耕作著の

ダンディズムの本、文学書、文庫本、意外なことに?フェミニズムの本、

それにフランス語の本も少し。

 

木馬やちょっとエロチックな人形、小さなアンティークみたいなものも

あります。入り口横の壁面にはカーニバルか仮面舞踏会の仮面が。

 

私は堀辰雄の「花を持てる女」(ヤケやシミはありますが旧漢字・

旧仮名遣いの初版だった!)と

小さなかわいらしいフランスの本(「赤い封印」とか「赤い封蠟」の題で

翻訳が出ていたらしい)を買いました。

 

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ドアの内側には四谷シモンのポスターが。上の方は芸者さんの千社札かな。

 

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 Le cachet rouge は花柄の布の表紙にマーブル染めの紙の見返し、写真ではよくわかりませんが、小口は金色です。

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ああ、京都のとっておきの場所がひとつ減ってしまうわ…

 

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 2016年5月26日 追記: 三月書房さんのブログで、アスタルテ書房は店番をしたいという人がいて存続しているという噂は本当か、と読んだので、検索してみると、去年の12月に訪問したかたの記事がありました。

何度か近くに行った時に、前を通ってみましたが、マンションのエントランスが閉まっていたので入りそびれましたが、郵便受けは残っているようでした。

数日前、寺町に用事があったので、帰りに寄ってみました。マンションのエントランスが開けてあったので、2階に行ってみると、ドアが完全には閉めてない状態で、営業している様子。そっと開けてみると、以前と変わらない雰囲気で、閉店セールのときにいらしたと記憶している女性(奥様?)が店番をしていらっしゃいました。定休日の木曜以外は開けていらっしゃるそうです。